展覧会
TOTOギャラリー・間

模型群 ©yujiharada

2021年 新春号中川エリカ展
「JOY in Architecture」会期/2021年1月21日(木)~3月21日(日)

新型コロナウイルスの感染拡⼤防⽌の⼀環として、事前予約制を導⼊して開催いたします。
事前予約は、TOTOギャラリー・間ウェブサイトよりお申し込みください。

緊急事態宣言下におきましては、開館時間を11:00~17:00に変更いたします。

建築家の登竜門とされるJIA新人賞、吉岡賞、住宅建築賞金賞など数々の賞を受賞し、エネルギッシュに活躍の場を広げている若手建築家・中川エリカ氏。
会場では、初期から近作におけるさまざまなスケールの模型を一挙に公開し、中川氏が考える建築の「よろこび(JOY)」を躍動感いっぱいに展示いたします。
周辺環境や人間の営みを巻き込んだ「建築の組み立て方・フレーム」を探求する姿勢と本展覧会を「建築そのもの」として表現する中川氏の挑戦をご覧ください。

A Study of a Neighborhood in Tokyo, Japan ©yujiharada
丘端の家 ©yujiharada

JOY in Architecture

 私は建築を考えるとき、どんなカタチが良いか、と同時に、そのカタチがどんな使い方を生み出すのか、身体にどんな感覚をもたらすのか、ということを大事にしています。また、どの街にもそこにしかない雰囲気や体験が必ず存在し、代えがたい価値をもっていると思うからこそ、建築が周辺環境とどのように補い合うことができるのか、ということも大事にしています。建築よりも小さなものと大きなもの、言葉にさえできないものを建築と同時に検討していくためには、身体性をもった巨大で具体的で詳細な模型が必要なのです。
 常日頃、スケールの異なる複数の模型をつくっているのですが、精一杯の、がむしゃらで向こう見ずなエネルギーでつくり続けていると、建築におけるよろこびをいくらでも見出すことができます。模型から建築を生み出すことが楽しくてしょうがないというよろこびもあれば、人びとの暮らしや営みには生きた発見がまだこんなにもあるのかというよろこびもあります。よろこびは、街や身体を通じて多様な意味や背景をもって現れるから、言葉にした瞬間、大事な何かが失われてしまうような気がして、その全てを簡単に言葉にすることはできません。だから、いつも、まだ言葉にさえできないものへ向かって、模型を通じた建築スタディをしているのだとも言えます。模型にすることで、はじめて、おもしろいと気づかされることこそ、私の建築にとっての重要なエッセンスとなっています。模型という具体的な物質を、身体を通じてさらに翻訳し、建築という次の新しい具体的な物質を生み出そうというスタディ、その経験を繰り返すなか、理論書によって考え方を示す方法もあれば、スタディの方法によって考え方を示す方法もあるのではないかと実感するようになりました。
 この展覧会では、現時点で思いつく限りのスタディやリサーチの実践が一堂に会しています。現代の建築において、建築を表現する方法にルールや様式はなく、何を表現して何を表現しないかというジャッジ自体が建築家の思想であり創造性の記述なのだろうと思います。ゆえに、物質を組み立て建築家の思想を表現するという意味で、本展覧会は、展示のためではなく、建築そのものとしてつくられた展覧会です。まだ見ぬ建築のために、必要不可欠だと感じて、地球の裏側、南米チリまで事務所全員でリサーチにも行きました。リサーチでは約400のパブリックファニチャーを中心とした野外什器を記録し、屋外での居場所のつくられ方、什器の組み立て方、そこに現れる人間それぞれの気質、街への態度の示し方などを学びました。おもしろいと思うことは、いつものように、具体的で詳細な模型にすることで、リサーチで得た発見や体験をそのままこれからの設計へ連続させていこうとする挑戦も会場にあります。多様な批評を巻き起こす建築展覧会となるよう、準備を進めています。建築を通じてまだ見ぬよろこびをたくさん分かち合うことができるなら、これに勝るしあわせはありません。

SKIP ROOF ©yujiharada
桃山ハウス ©Koichi Torimura
  • 中川エリカ氏の画像

    中川エリカ
    Erika Nakagawa

    なかがわ・えりか/1983年東京都生まれ。2005年横浜国立大学卒業。07年東京藝術大学大学院修了。07~14年オンデザイン勤務。14年中川エリカ建築設計事務所設立。14~16年横浜国立大学大学院(Y-GSA)助手。おもな作品に「ヨコハマアパートメント」(2009、西田司/オンデザインと共同設計)、「桃山ハウス」(2016)など。おもな受賞に、JIA新人賞(2011)、住宅建築賞金賞(2017)、第34回吉岡賞( 2018)など。
    ©yujiharada