新商品開発物語

(左)木村知之 (右)吉田瑠美 写真/山内秀鬼

2021年 新春号わが家のトイレは、
宙に浮く壁掛けトイレ。

「住宅用壁掛トイレFD(フローティング・デザイン)」

住宅用トイレの常識が変わります。
壁掛けトイレは、便器の下が空きスペースになるため、ワイパーで床の奥まで全面拭き掃除ができる、とても便利な商品です。
それが、今家庭用トイレとしてコンパクトなサイズになって、初登場。
その魅力と、開発にまつわるエピソードを担当のふたりがご紹介します。

TOTO株式会社 トイレ空間生産本部 トイレ空間開発部 トイレ空間住宅 商品開発グループ
木村知之
TOTO株式会社 デザイン本部 デザイン第二部 第二デザイングループ
吉田瑠美

お掃除が画期的にラクになる、壁掛けトイレ

壁掛けトイレとはどういうものですか。

木村今日本の家庭にある洋式トイレは、ほとんどが床に据え付ける床置き型のものです。いっぽう壁掛けトイレは、便器が床ではなく、後ろの壁に固定してあるもの。その最大のメリットは、便器の下が空きスペースになっているため、お掃除がとてもラクだということです。

吉田お客さまにトイレに関するヒアリングを行うと、清潔さに一番の関心が集まります。なかでも便器と床の境の汚れが気になるという声が多かったんです。これなら便器の下が何もない空間なので、床用のワイパーが奥までとどいて、簡単にお掃除できます。

木村欧米では一般的ですが、日本でも最近は高速道路のサービスエリアや駅舎のトイレに積極的に採用されています。やはりパブリックな場所ではつねに清潔を保つことが求められますからだと思います。

なぜ日本の住宅では普及してこなかったんでしょう。

木村壁掛け型は、陶器製の便器とそこに座る人間の重さを下ではなく、横から支えることになります。そうすると、通常の木造住宅の壁だと耐えきれないんですね。たとえばヨーロッパの住宅や日本の公共建築などのコンクリートの壁でしたら、何百キロという力を伝えても心配ありません。しかし木造住宅だと、特別な仕様でない限り、やはり無理がありました。

TOTOのラインアップには、以前から住宅用の壁掛けトイレはありましたよね。

木村はい。しかし荷重を支えるため、背後に大型キャビネットを備えるシステムトイレというかたちをとらざるをえませんでした。そうすると広いスペースが必要になり、どこの家庭にでも設置できるというわけにはいかなかったんです。

ふつうの住宅に設置できる
「住宅用壁掛トイレFD」

ということは、今度の新商品は違うんですね。

木村「住宅用壁掛トイレFD」は、標準的な木造住宅なら、新築はいうまでもなく、リモデルでもお選びいただけるようになった画期的な商品です。

これまで使っていた床置き型のものから、清掃性のいい壁掛けトイレに替えられると。

木村そういうことです。便器先端から後ろのキャビネットまでふくめて760㎜と、床置き型の普及モデルとほぼ同じ奥行きです。キャビネットの幅も430㎜ですから、今お使いのトイレとほぼ同じスペースにすっぽり入れられるというわけです。

吉田キャビネットの内部には、給水タンクだけでなく、ホコリのたまりやすい止水栓やコンセント、洗浄レバーまで収まっており、便器裏も隠蔽されているので外観はすっきり。お掃除もさらにスムーズになりました。

便器がインテリアの一部となった

便利なだけでなくデザイン的にもすっきりしましたね。

吉田キャビネットは幅も奥行きも極限まで小さくしています。また床置き型の便器に比べ、便器が床から浮いているので軽やかで浮遊感があり、空間がすっきり、広く感じられるんです。

なるほど。

吉田これだけシンプルだと、お客さまのどんなインテリアにも溶け込みやすいです。キャビネットの上は飾りを置くスペースにもなります。家にゲストをお呼びしたとき、トイレだけはほぼ必ずお連れしますよね。ちょっとしたおもてなしをしたい場所ですし、最近は自分らしく飾ったトイレをSNSに載せる方も多く、居室の一部になってきています。キャビネットは2色、天板も、手洗い器とセットで5種類のものを用意して、インテリア性を高めました。

足元照明もムードがありますね。

木村壁掛け型は、足元照明を入れることで浮遊感がうまく演出できるんですね。間接照明という意味でも効果的です。

吉田また、夜中トイレに行くと、照明で目が覚めてしまうというお子さまやシニアの方もいらっしゃるそうです。FDなら、入室すると自動でこれだけが点灯するので、まぶしくないし、足元も安心です。

壁掛けにしかできない効果ですね。

吉田お母さんたちからは、子どもがこわがらないとか、楽しい場所になるというコメントもいただきました。

面材を使った、ざん新な構造

ところで、どうやって壁掛けトイレを床置き型のサイズにできたのですか。

木村そのためには、便器と付属物をそのサイズに収めること、そして荷重を支えるための構造が必要です。人が座る便器そのものは変えられないので、スペースを小さくするには後ろのキャビネットを削るしかありません。スリム化したうえで、従来その中にあった荷重を支える仕組みを根本から考え直さざるをえませんでした。

そうでしょうね。

木村システムトイレの場合は、左右の隅柱にフレームを取り付けています。フレームを受木に固定して、荷重を直接隅柱に逃がすわけですね。そしてそのフレームを間口いっぱいの収納キャビネットで覆う。しかし、FDはキャビネットを小さくするため、隅柱に頼らないスタンドアローンの形態が必要でした。そうすると真後ろで荷重を支えなければなりません。

横ではなく真後ろで支えるんですね。

木村木材の壁に荷重をかけると、当然内側にたわみます。そこでリモデルの場合は後ろ壁に筋かいなどがあるかを確認せずとも、補強材をはめ込むことで簡単に対応できるようにしました。ちょっとだけ壁の厚みが増す感じですね。その面材と便器やタンクなどを組み込むフレームを一体化させて、荷重を受け止めるかたちにしたんです。システムトイレが受木から隅柱に荷重を逃がすのに対して、こちらは面全体に逃がすということです。

壁面全体で支えるわけですね。

木村強度にはいろいろなパラメータがかかわるので、現物の部材での実験や3D解析などを駆使して、大変な苦労を重ねました。そうしてようやくこの36㎜という面材にたどりついたんです。仕様や強度の関係もあって、あくまで木造戸建て住宅で、トイレの間口750〜960㎜という制限を設けさせていただいていますが。

コンパクトななかにきめ細かい配慮

コンパクト化も大仕事でしたね。

木村奥行き760㎜を実現するため、キャビネットを薄くしたのですが、ほぼ給水タンクのサイズそのままの奥行きになっています。

吉田高さも圧迫感のない750㎜に収めてもらいました。手洗い器カウンターの高さに統一したんですが、無理なく、手洗いや、物を置く動作ができる人間にとって自然な高さなんですね。

木村その分、構造計算がさらに大変になりました(笑)。幅は当初、470㎜なら入るけど、430㎜にするんだったら、コンセントや止水栓は外に出ますよと言ったんです。でもデザインチームがつくったモデルを見たら、430㎜に全部収めたほうが、すごくシンプルできれいで、お客さまが喜ぶのは絶対こっちだね、ということになりました。

吉田角にはアールをつけて、安全性にも配慮しています。

木村隙間調整や長さ調整がないので、施工もとても簡単です。

コストダウンにも取り組んでいますか。

木村コストダウンのために、給水タンク、パイプなどの部材をほかの製品と共通化しました。既製部品を使うことにはコストダウンだけでなく、補修・交換が簡単にできるというメリットもあります。

吉田商品価格も、以前は床置き型のハイクラス商品よりも高価格でしたが、床置き型と変わらないレベルに収まりました。

木村細かい配慮も重ねているので、選んだお客さまにはきっとお喜びいただけるはずです。

吉田壁掛トイレFD、ぜひ比べてみてくださいね。

*詳しい条件などはTOTOホームページカタログをご確認ください。

  • 木村知之氏の画像

    木村知之Kimura Tomoyuki

    TOTO株式会社
    トイレ空間生産本部
    トイレ空間開発部
    トイレ空間住宅
    商品開発グループ
    きむら・ともゆき/1993年にTOTOに入社。衛陶生産本部の開発にて小便器の開発に従事。2017年からトイレ空間生産本部。19年から今回の新商品の企画立案などを推進。

  • 吉田瑠美氏の画像

    吉田瑠美Yoshida Rumi

    TOTO株式会社
    デザイン本部
    デザイン第二部
    第二デザイングループ
    よしだ・るみ/2012年にTOTO入社。デザイン本部にてシステムバス、システムキッチンのデザインに従事。2017年度よりトイレ空間のデザインを推進。