TOTOグループは、
2030年に実現したい共通価値創造に向け、新たなスタートを切ります。
新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030
2020年度の振り返り
2020年4月社長就任時、世界は新型コロナウイルス感染症拡大という未曽有の緊急事態下にあり、 TOTOグループも年度目標を策定することすら難しい状況でした。しかし、私は社員とそのご家族が安全で元気であれば、いずれ業績は取り戻すことができると考えていました。TOTOグループは、 創立から100年以上の歴史の中で良い時もあれば悪い時もあり、さまざまな困難を乗り越えて成長 し続けてきた会社です。これは、その時々の環境変化に柔軟に対応し、社員全員がしっかりと理念を共有し、目的を持って行動してきたからです。
新型コロナウイルス感染症拡大により、部品供給が滞ったことによる一部商品の納期遅延や、緊急事態宣言によるショールーム休館で国内リフォーム事業の要となるコンサルティング活動ができなくなるなど、さまざまな影響がありました。そのような状況において、国・地域や部門を越え社員が一丸となり、一人ひとりが自主的にお客様や社会のために、そして仲間のために何をすべきかを考えて行動してくれたことを誇りに思っています。その行動の根底には、共有された企業理念があり、有事の際にグループ一丸となって動ける力は、何よりもTOTOグループの財産であるとあらためて実感 するとともに、心強さを感じた1年でした。
TOTOグループの存在意義
TOTOグループは、初代社長が二代目社長に送った書簡の中に記された言葉を「先人の言葉」として大切にしてきました。「どうしても親切が第一、良品の供給、需要家の満足が掴むべき実体で、その実体を握り得れば、結果として報酬という影が映る」という考え方です。これは経営理念の根幹であり、揺らぐものではありません。代々の社長が大切にしてきたこの理念を後世にしっかり受け継いでいくことが、私の使命です。
近年は、新型コロナウイルス感染症拡大や度重なる自然災害、国際情勢の変化、デジタル技術の 進展など、変化の激しい不確実で複雑な時代となっています。このような状況下であらためて「TOTOグループの存在意義とは何か?」という根源的な問いを突き付けられています。将来どこへ向かうのか、どのように社会やお客様の役に立っていくのかということを考えたときに、「先人の言葉」に立ち 戻ります。私たちの存在意義は社会のため、お客様のために、豊かで快適な生活文化を創造していくことです。世の中のさまざまな変化はありますが、私たちが大事にしていかなければならないもの、私たちが迷ったときの答えは、創立者の想いや経営理念の中にあります。
社是や企業理念、企業行動憲章という将来にわたって引き継いでいくもの、つまり「心」の部分は不変のものです。一方、その時々の環境変化に応じ体の動かし方は変えていきます。「心」の部分は社員一人ひとりの行動の前提としてしっかりと根付いており、それがTOTOグループの強みとなっています。
新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030
2021年度より、長期視点で実現したい暮らしや社会・環境を明確化した「新共通価値創造戦略 TOTO WILL2030」(以下、WILL2030)を新たにスタートします。
WILL2030では、「きれいで快適・健康な暮らしの実現」「社会・地球環境への貢献」を目指す姿とし、環境変化に強い体制で組織能力を高め、経営スピードを上げることで、持続的成長を追い求めていきます。
2018年度から2022年度までの中期経営計画として「TOTO WILL2022」(以下、WILL2022)を推進してきました。5年間の計画を緻密に分析し、組み立て、そこに私たちの意志を込めて策定したものです。しかし、度重なる自然災害や新型コロナウイルス感染症拡大などの外部環境の大きな変化によって前提が崩れてしまいました。今後一層変化のスピードは速く、また大きくなってきます。したがって今後は、長期的に目指す姿を明確に定め、そこからバックキャストして単年度ごとで変化に対応しながら確実に課題を解決していく、という考え方で進めていきます。単年度ごとを見れば当然ながらさまざまな変化もあり、迷うことがあったとしても、「2030年にこういう社会を創り出していく」という長期の目標を共有して、体の動かし方を変化に対応させ、目指す姿の実現に向けて全社一丸で取り組んでいきます。
2030年に目指す姿
WILL2030の推進にあたっては、2030年に私たちが目指す姿を明確に示さなければなりません。さまざまな議論がありましたが、社員の心の中に浸透している企業理念そのものを実現していくことが私たちの目指す姿だということに行き着きました。つまり“企業理念を体現する”ということです。
企業理念の中にある「豊かで快適な生活文化」を創造していくこと、そして「持続可能な社会の実現に向けて社会や地球環境に貢献」していくこと、それが私たちの目指すべき姿です。今後、私たちは経営とCSRを完全に一致させ、社会課題・環境課題を解決しながら、その結果として経済的価値を伸長させていきます。つまり、社会課題・環境課題の解決と経済成長というのは、必要十分条件となります。この考え方を今後10年の成長の形として、TOTOグループ全体で共有しました。
WILL2022においては、推進エンジンとなる「TOTO グローバル環境ビジョン」の中で「きれいと快適」「環境」「人とのつながり」をCSRのマテリアリティに設定していました。しかし、これからは経営とCSRを分けるのではなく、経営の真ん中にCSRを組み込んでいきます。WILL2030では、経営とCSRを同心円とし、完全に一体化させ、「きれいと快適」「環境」「人とのつながり」を“企業理念を体現する”ための必要不可欠な経営のマテリアリティとして推進します。
TOTOグループは創立からの生業として、生活者視点で世の中の半歩先、一歩先を進み、社会に「きれいと快適」をもたらす商品を提供すると同時に「節水をはじめとした環境に配慮」した商品を提供してきました。「きれいと快適」と「環境」の交わりこそがTOTOらしい商品です。したがって、これらを「サスティナブルプロダクツ」と定義し、その商品の構成比目標を2030年度に78%と設定し、成長していくことを明確にしました。
「きれいと快適」を実現しながら「環境」課題も解決していくことが、“TOTOらしさ”であり、 WILL2030の核となる考え方です。
2050年カーボンニュートラルに向けて
2020年10月、日本政府により、2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことが宣言されました。気候変動による地球温暖化防止への取り組みとして、TOTOグループにおいても2050年のカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現に貢献していきます。科学的根拠に基づいたCO2排出量削減目標の認定制度である「SBT※1」の取得や、使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的イニシアチブ「RE100※2」への加盟など、将来に向けたマイルストーンを設定し、従来のCO2排出量削減の取り組みに加え、技術革新や再生可能エネルギー電力の調達拡大などに積極的に取り組んでいきます。
TOTO商品の多くは、使用期間が約10年から20年と長く、商品ライフサイクル全体で見ると、商品使用時に排出されるCO2排出量が全体の9割以上を占めています。つまり世界中の人々に「きれいで快適」かつ「環境」性能の高い「サスティナブルプロダクツ」をお使いいただき、生活価値を向上しながら環境負荷を低減させるということが環境貢献につながります。私たちが正しく事業を行い、商品が普及していけばいくほど、「きれいで快適」でありながら「地球環境」にやさしい社会を創ることができるのです。
※1Science Based Targets パリ協定の水準に整合する、企業における温室効果ガス排出削減目標
※2Renewable Energy100 事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的イニシアチブ
事業そのものがSDGsへの貢献となる
TOTOグループにとって、社会価値・環境価値と経済価値は、極めて相関性が高く、まさに共通価値創造であるのだと思います。私たちは社会課題、環境課題を解決していくことで、必ず経済成長していけると考えています。この考え方に基づけば、私たちは、事業を通じて国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」にも貢献することができます。例えば、SDGsのテーマ6「安全な水とトイレを世界中に」は、TOTOグループの事業そのものです。私たちが正しく事業活動を行っていけば、社会や環境も含めて世の中のお役に立てるという意味で、TOTOグループは非常に恵まれた会社だと思います。
中期経営課題(WILL2030 STAGE1)
WILL2030を実現していくため、最初の3年間(2021~2023年度)を「中期経営課題(WILL2030 STAGE1)」として、市場の成長性を常に注視しながら経営課題を明確にし、環境変化に対応していきます。WILL2030では、長期視点の目標を掲げましたが、直近3年間をどのようにすればそこに近づいていけるかという視点で進めていきます。重要なポイントは、「サスティナブルプロダクツ」に磨きをかけてスピーディに市場に投入していくこと、そして、お客様に一層信頼されるサービスを極めていくことです。そのためにマーケットを見える化し、各国・地域に合った体制をつくり、デジタル技術を活用した自社だけでは成し得ない価値創出、事業プロセス変革を実践し、世の中を上回るスピードで変化しながら、世界中にTOTOファンを増やしていきます。また、「マーケティング革新活動」「デマンドチェーン革新活動」「マネジメントリソース革新活動」といった全社横断革新活動をそれぞれのリージョンの特性に合わせて推進します。
日本住設事業
日本国内では、引き続き「あんしんリモデル戦略」の進化を図ります。これまでも、お客様のリモデルへの入り口の不安を取り除く活動を進めてきましたが、今後はさらに一歩踏み出し、お客様ごとに夢のリモデルを実現していただけるよう、デジタル技術を活用した情報発信を強化するなど、これまでの「みえる・わかる」に加え、お客様の「夢を描く」をお手伝いし、一層お客様に寄り添った形に進化させます。
パブリック市場についても、TOTO独自のクリーン技術による「きれいで快適」の進化やタッチレス化への対応に加え、デジタル技術の活用による故障や清掃タイミング、トイレブースの空き状況の見える化など、お客様ニーズに合わせた新たな価値提案を加速させます。これらを推進することにより、新型コロナウイルス感染症の収束後、インバウンドのお客様が戻ってこられたときには、各地の施設がショールームとなって日本のトイレ文化の進化をあらためて世界に発信していけると思っています。
中国・アジア住設事業
中国大陸事業では、市場が成長期から成熟期に差しかかり、お客様の層がさらに広がり多様化してきています。2019年度に行った市場の再分析で明らかとなった新たな課題にしっかりと取り組み、お客様価値の高い商品の提案と、それに合わせた価値訴求の強化に努め、ブランド価値を一層高めていきます。また、長期的な市場成長による需要増に対応するため、衛生陶器を製造する東陶福建第2工場や浴槽を製造する南京東陶新工場など、地球にやさしい環境配慮型工場で最適な供給体制の構築を進めています。
アジア事業では、世界の供給基地としてベトナム、タイでの生産体制を環境に配慮しながら充実させるとともに、各国・地域の多様な文化・生活様式に合わせた販売網の強化や積極的なプロモーション展開による「ウォシュレット」の拡販、アフターサービス体制の整備に取り組んでいきます。
米州・欧州住設事業
米州事業では、「ウォシュレット」が需要の急増で本格的な普及の入り口へ移行しつつあるなど、 温水洗浄便座を取り巻く市場環境が大きく変化しています。また、衛生性を重視した「タッチレス商品」や高い節水性能や快適性、デザイン性がお客様に評価されているウォシュレット一体形便器「ネオレスト」も堅調です。引き続き中・高級市場において、きれいで快適な商品の価値伝達を強化し、商品の優位性によってブランド価値を高め、他社との差別化を図ります。また、ショールーム展示の拡充やホームページの充実、eコマースなど、お客様接点の強化や効率的な供給体制づくりを推進し、確実に需要を取り込んでいきます。
欧州事業では、引き続き欧州のお客様の嗜好に沿うデザイン性が高く、きれいで快適な商品の価値伝達を強化します。ドイツ、フランス、イギリスを中心に、販売チャネルの構築や著名物件の獲得を進めており、販売代理店におけるショールーム展示の質の向上や、施工店の開拓・拡大に注力していきます。
セラミック事業
DX(デジタルトランスフォーメーション)による社会変革は、世界中で加速しています。クラウドサービスやAIといったデジタル技術が今後発展していく中で、膨大なデータの処理が一層求められます。膨大なデータを安定的に処理するためには、半導体の大容量記憶・高速処理・低消費電力といった技術進化が欠かせず、その半導体を製造する機械装置も一層の進化が求められます。TOTOグループは高いセラミック技術と次世代もの創りで、DXによる社会変革を支えていきます。
リージョンの特性に合わせた全社横断革新活動
マーケティング革新活動
マーケティング革新活動では、世の中の変化と多様化するお客様ニーズをいち早くつかんだ価値伝達と商品計画を実行します。「デザインとテクノロジーの融合」をさらに進化させ、「サスティナブルプロダクツ」の市場投入を進めていきます。2020年度も、国際的に権威のあるデザイン賞である「iFデザイン賞」を8年連続、「レッドドット・デザイン賞」を9年連続で受賞するなど、デザイン強化の取り組みの成果が確実に表れています。また、これまでも展開してきた「TOTO CLEANOVATION」を人々の行動や意識に合わせて「WASHLET」「CLEAN SYNERGY」「TOUCHLESS」という3つの価値で世界中のお客様に訴求していきます。今後一層マーケットの見える化を進化させ、 各リージョンで求められるお客様価値を把握し、お客様起点の新たな生活価値・体験価値を創出していきます。
デマンドチェーン革新活動
これまでのサプライチェーンは連続的に物が流れていくことが前提となっていました。リードタイムの短縮や在庫削減は、全世界のサプライチェーンがすべて止まらないという前提で成立してきたものです。しかし、世界各地で起こる度重なる自然災害や新型コロナウイルス感染症拡大により、サプライチェーン上、途切れる部分が出てきました。これは大きな変化です。今後は、サプライチェーンそのものについて、BCPを強く意識しながら、どの地域で販売するのか、そのためにどの地域で製造するのかをもう一度見直していく必要があります。連続が途切れる場面を想定して、いかに準備ができるかが重要となり、デジタル技術の活用などでサプライチェーンの見える化にあらためて取り組み、納期の遵守、在庫の適正化を進めていきます。
ものづくり革新では、マーケティング革新活動との連携により、シーズ・要素技術戦略を全社横断で推進し、「サスティナブルプロダクツ」のスピーディな商品化を強化していきます。また、生産革新として、自動化やリモートオペレーション化、工場のビッグデータ活用による良品条件確立や生産効率向上など、デジタル技術を活用した工場の生産能力最大化を図っていきます。
マネジメントリソース革新活動
マネジメントリソース革新活動は、引き続きダイバーシティの推進が中心になります。新たな価値創出につながる在宅勤務の拡大や65歳定年の実現、女性の活躍推進、障がい者の活躍推進など、多様な人財が、安心して働き、能力を発揮できる環境整備を進めていきます。
在宅勤務の拡大によって、通勤時間から解放され、社員のQOL※は向上するでしょう。また、新たに生まれた時間のさまざまな過ごし方の中から、今まで気づかなかった新しい気づきが生まれてくると思います。その気づきを議論して新たな価値創出につなげていきたいと考えています。つまり在宅勤務の拡大は、仕事の効率性向上だけではなく、成長戦略だと捉えています。TOTOグループは、生活者の視点で物事を見て「こうなれば良いな」ということを半歩先、一歩先の形にして、ものづくりを極めてきました。新しい働き方の拡大を新たな価値創出に結びつけていきたいと考えています。
ステークホルダーの皆様とともに
TOTOグループの事業活動は、さまざまなステークホルダーの皆様に支えていただきながら、また協業しながら成り立っています。そのため、ステークホルダーの皆様に対して、常に正直で誠実であり続けなければならないと考えています。WILL2030で掲げたマテリアリティの一つ「人とのつながり」において、お客様、社員、株主、お取引先様、地域社会の皆様に信頼に足る会社と思っていただけるように取り組みを強化していきます。
WILL2030の実現に向けては、社員一人ひとりの成長が欠かせません。高い組織力と人財力を実現するために、社員とのエンゲージメントは特に重視しています。2020年度から、若手社員とのオンラインミーティングを開始しましたが、次世代を担う社員と直接議論することで、お互いに一層刺激を得て、次のエネルギーにしていくことが、さらなる成長につながっていくと考えています。
また、コーポレート・ガバナンスの強化についても、経営を管理・監督していく体制づくりを着実に進めており、今後も強化していきます。単に経営を管理・監督するということに留まらず、TOTOグループの存在意義、企業価値を高めていくためにどのようなことが必要なのかという部分をしっかり検討し、実行していくことが重要です。これらについては、社外取締役の方々の客観的視点なども頂戴しながら引き続き強化していきます。
私たちは、長きにわたり培われてきたTOTOブランドの上で事業活動を行っています。TOTOブランドは、「良き人が良きものをつくる」ことにより磨かれてきました。グループ社員約3万4,000人が正しいことを正しく行い、お客様や社会のためを思い、心を込めてつくったものは、単なる工業製品とは違う何かを醸し出してくれます。それが商品やサービスを通じお客様に伝わったとき、TOTOブランドは一層輝くことができると思います。TOTOブランドをさらに磨き続けていくことこそが「世界中にTOTOファンを増やしていく」ことにつながっていくのだと確信しています。