Vol.27 「水と大地」を外観で表現!環境への思いが込められたTOTOミュージアム完成までの道のり。

Vol.27「水と大地」を外観で表現!環境への思いが込められたTOTOミュージアム完成までの道のり。Text:Yayoi Okazaki Photo:Hiromitsu Uchida

「TOTOミュージアム」はとても個性的な形状をしています。丸いドーム状の建物は「水滴」、ゆるいカーブに縁どられ屋上緑化を施した建物は「緑の大地」がデザインモチーフだとか。水を大切にすることで環境貢献をめざしたい。そんなTOTOのメッセージが「大地を潤す水」という外観イメージに込められているそうです。ただその実現には難工事が予想され、特に問題となったのは巨大な大屋根でした… 今回は、100周年記念事業プロジェクトを立ち上げ、多くの人の夢を形にするまでの建設マンストーリーです。

能方 秀治(のうがた・しゅうじ)

工務本部
施設統括部
1989年TOTO株式会社入社

工務部に配属され、国内・海外の工場建設で機械設備の設計を主に担当。

1998年 国際事業部に異動し、海外のグループ会社の支援を担当。

2003年 TOTO USAに赴任し海外商品の開発等を担当。

2007年 中国・アモイにある合弁会社に出向、赴任。便座・タンク金具等の海外調達を担当。2009年 帰国し監査役室にて監査役の補佐を担当。

2011年 工務部に異動し国内外の建設プロジェクトに従事。


Chapter 1

工場ではなくてミュージアムを作る!?

工場ではなくてミュージアムを作る!?


「周辺景観との調和」「既存樹木の活用」などの環境コンセプトで整備された「TOTOミュージアム」全景。ミュージアム、ショールーム、研修施設を備えた2棟の複合施設となっている。

僕の仕事は工場やその内部の生産設備を作ること。インドネシア、タイ、中国など、海外で工場を立ち上げるプロジェクトにも数多く関わりましたが、これが本当に大変で。設計こそ自分たちが手掛けても、実際に施工するのは現地の会社です。信頼できる仕事相手を探せるのか、僕らが求めているパフォーマンスが実現できるのか。まったく気が抜けませんでした。それだけに、一から作った建物が、工場として稼働し始めたときの喜びは格別です。次々に製品が出来上がってくるのを見ると、おおっという感じ。工場という生産現場を作る仕事ならではの醍醐味ですね。単なる箱、建物を作るだけじゃ面白くない。ずっとそう思ってきました。なのに、まさかミュージアムを作ることになるとは! 想像もしていませんでした。

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Chapter 2

巨大なドーム状の屋根に衝撃を受ける。

巨大なドーム状の屋根に衝撃を受ける。


「TOTOミュージアム」の外観的特徴になっているドーム状の大屋根。滑らかな弧を描く曲線と陶器の肌を思わせる白一色の塗装が美しい。

それはTOTO福建工場の建設準備に追われている頃です。ミュージアムの建設を担当して欲しいという連絡があったので、驚きましたね。その当時は、まだ建物の雛形もできていない。どのくらいの規模で、どういったものを作るのか。それがようやくまとまったという状態。ただし信頼できる相手と四角い箱を作るのなら、工期と予算だけきっちり守ればいい。海外の工場建設よりも楽だと思いました。ところが、この姿形じゃないですか(笑)。初めてパースで見たときはものすごい衝撃でしたよ。ああでもない、こうでもないと僕たちがまとめた建設コンセプトの1つ「創業の地にふさわしいTOTOらしい景観」という難題を、設計事務所さんが見事に表現してくれた。経営陣に初めて披露したときも驚かれはしましたが、とても好感を持っていただいて。プロジェクトとしては上々の滑り出し。でも僕としては、こりゃまいったなと。全然四角い箱じゃない(笑)。特に「水滴」を模した巨大なドーム状の屋根がとても気がかりでした。

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Chapter 3

いいものを作りたいという熱意が支えに。

いいものを作りたいという熱意が支えに。

まず考えたのは来館されるお客さまのことです。快適に過ごしてもらうためには空調が重要な鍵を握りますが、巨大なドーム空間だとそれがとても難しい。しかも「環境に負荷をかけない施設」であることが大前提です。そこで床吹き出しや床暖房などを採用し、ドーム空間の屋根全体をダブルスキンルーフという二重の膜のような構造にして、さらに空調効果を高めたい。その上で「ソーラーチムニー」※注1や「デシカント空調」※注2など最新の環境手法と連動させる。このドーム型の屋根と空間は、環境配慮という点でも今回のプロジェクト最大の見せ場になるんですね。でもこの屋根の形だと構造体の鉄骨すべてが特注品。屋根材のボードも1枚ずつ曲面に加工する必要がある。それも足場を組んだ現場でミリ単位の微妙な手作業になるはず。難工事になるのは必然ですし、量産品の資材が一切使えない。予算や工期のことを考えると胃が痛くなりました(笑)。といってもやるしかない。すでにこの屋根に、みんな魅せられています。設計事務所さんの熱意もすごいし、建設会社さんも万全のバックアップ体制を整えてくれている。なんとしてもいいものを作るぞという熱い雰囲気でした。その制御や調整がトータルマネージメントとしての僕の役割。いいものを作りたいという思いとコストとの板挟みで辛かったですよ。僕もこの建物にはすっかり惚れ込んでいましたので。結局この葛藤や攻防は、最終局面まで続くことに。いま振り返ると工場を作るよりもはるかに大変だった。本当の意味でのビッグプロジェクトでしたね。

※注1「ソーラーチムニー」
“ソーラーチムニー”とは、熱を集める集熱壁とガラス面で構成された煙突のこと。このミュージアムでは、上昇気流を利用した自然換気の促進に加え、年間を通して太陽熱を除湿や暖房に活用する機能も兼ね備えている。
※注2「デシカント空調」
除湿において一般的には、圧縮機を用いて空気の温度を下げ除湿をするが、“デシカント空調“は、乾燥剤に湿度を直接吸収させる方式をいう。“デシカント空調“は、圧縮式に比べ、フロンガスを使わないので。地球に優しい空調(除湿)方式といえる。


  • 「ソーラーチムニー」はエコな空調システムの象徴。太陽光で暖められたガラスの塔内部の空気で自然換気を行い、暖房や除湿などにも活用。

  • 「床吹き出し空調」は居住域を効率的に空調することで快適な室内環境創出と無駄な空調エネルギー削減に役立っている。

  • 「ミュージアム(展示エリア)」エントランスの天井には水玉状にデザインされた空気孔が。季節の変化に合わせた省エネ空調が行われている。

Chapter 4

夢のプロジェクトは大きな絆の象徴に。

夢のプロジェクトは大きな絆の象徴に。


「TOTOミュージアム」のエントランスに立つ能方さん。開放感が素晴らしい巨大吹き抜け空間も、建設に関わった多くの人の熱意の賜物だ。

また「陶器」を思わせる白一色の塗装も大きな不安点でした。特にドーム状の屋根は汚れが目立つので、なんとしてでも汚れ対策をしなければならない。そこで、塗装したモックアップ(模型)を敷地内に置いて、自分たちで検証実験を1年ほど続けました。結果的に、地下水で自動洗浄するエコな仕組みなどを取り入れ、大丈夫だと確証を得てから施工しましたが、いまでも屋根を見るたびにドキドキしますよ(笑)。それは同僚たちも同じ。みんな屋根のことを気にし続けてくれている。TOTOは水を大事にしている会社なので、やはりこの「水滴」の形は社員の共感を呼ぶんでしょうね。予想以上の難工事でしたが、やはりこの形を実現できて良かったとしみじみ思います。屋根の足場を外して建物の全貌が見えたときは、涙が出るほど感動しましたよ。困難を共に乗り越えてきたので、会社や立場の違いを超えてスタッフ同士も深いつながりができました。設計事務所、建設会社、そしてウチの社内。春に年1度の定期点検を設定したのも、桜の花に囲まれたいちばんキレイな姿を眺めたいから。「みんなで集まろうよ」という感じです。このプロジェクトで一緒に働いた人への格別な思いは、生涯消えることはないでしょうね。

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編集後記

編集後記


屋上だけではなく各階のひさし上にも緑化が施されているのが、能方さんのお気に入り。自然採光もふんだんに取り入れた環境に配慮した建物は、居心地も抜群にいいんだなと改めて実感できました。

「TOTOミュージアム」は当初の年間想定客数を2~3か月でクリアしたとか。「うれしい誤算ですね」と能方さんも満足そうでした。建築業界の方の見学希望が多いのも、やはり大屋根のインパクトがあるから。「ものづくり」のための設備を作る。それが自分の誇り。「裏方だけど大事な後方支援ですから」ときっぱりおっしゃっていましたが、今回のプロジェクトでも確かな手ごたえを掴んだ様子。堅実な社風で知られるTOTOにとっては、思い切った建築デザインだったようですが、それだけに創立100年のモニュメントにふさわしい存在感が生まれたのですね。

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