Vol.29東京・池袋に「夢のトイレ」が誕生!
「エコリモコン」を全面的に採用した人と環境に優しいデザイントイレができるまで。Text:Yayoi Okazaki Photo:Hiromitsu Uchida
昨年8月にオープンした「TOTOミュージアム」は、創立100周年記念事業のモニュメント的な存在です。創業の地・北九州市小倉に誕生した新ランドマークは、多くの来館者で連日賑わっているとか。実はこのミュージアム、充実した展示内容だけではなく、日本でも最先端の「環境配慮型施設」としても注目されているのです。環境に優しい手法や技術がどこでどう使われているのか。そのヒントが建物コンセプトの水滴をイメージしたアイサイン。探してみると、館内のあちこちで見つけられるはず。それが「環境教育」につながることが、担当者の願いでした。今回は、「環境アイテム100」を手掛けた山内さんに、「TOTOミュージアム」のエコ的ポイントも教えてもらいました。
山内 大助(やまのうち・だいすけ)
ESG推進部
ESG推進グループ 企画主幹
一級建築士
1987年TOTO株式会社入社
商品企画部門でユニットバス、システムトイレ、システムキッチンなどの商品企画を担当。
1994年 キッチン開発部に異動。システムキッチンの開発設計を担当。
1997年 商品統括部門に異動。多機能トイレ「01」などの商品企画、全社の環境商品推進を担当。マーケティング部でTDYグリーンリモデルの立ち上げを担当。
2012年より現ESG推進部にて、グローバル環境ビジョンの立ち上げを担当。

Chapter 1
環境アイテム100とは?
今回の100周年記念事業建設プロジェクトは、ごく初期の建築コンセプトの段階から「環境配慮型施設」(太陽・水・風などの自然エネルギーを最大限に活用した建物)にすることが決まっていました。そのTOTO側の要望に応えて、設計事務所さんが提案してくれたのが、100周年と絡めた100の環境手法。それを元にTOTOらしさを織り込んで分類・再構成し、誰にでもわかるコンセプトに変えたのが「環境アイテム100」です。僕はその作業を担当しましたが、やはり「水を大切に」の会社なので、節水関連のボリュームが増えてしまいましたね。さらに衛生陶器工場から出る廃棄物の有効利用を織り込み、いままでにない活用法が見つかったのも大きな成果でした。
「環境アイテム100」のアイサイン。7色(水色・赤・黄・茶・緑・紫・藍)で7ジャンルの環境手法を視覚化している。
トイレで発見した「001節水型大便器」と「041省エネ型ウォシュレット」のアイサイン。海外からのお客さま向けに英語表記も。
Chapter 2
わかりやすい言葉で伝えたい。
ただ、この作業中にずっと考えていたことがあります。それは、一般のお客さまにどのように「環境アイテム100」を伝えるのかということ。この建物はミュージアムがあるので、ふらりと来られる方が圧倒的に多い。また専門家や団体の方々にも、会議室のパワーポイントで説明して終わりじゃ味気ない。特に説明するスタッフがいなくても、自然と気づいてもらえる仕掛け、あれっと思える引っかかりが館内に欲しいと思いました。というのも、「環境アイテム100」には、「ひさしを使った直射日光の遮断」のような、とても身近な例もたくさん含まれている。子供たちにも環境手法の具体例を知ってもらえれば、新しい未来につながるかもしれない。そこで「環境アイテム100」をアイサインにできるよう、小学生にも理解できる短めの表現に書き直しました。建築専門用語を1つ1つ「翻訳」するのは、想像以上に大変でしたね。立場の違ういろいろな方にも意見を聞きながら準備を進め、掲示する場所は建物が完成してから探すことになりました。
たとえば駐車場の舗装面。すぐそばに「環境アイテム100」のアイサインを2つ発見できる。
「048衛生陶器くずの舗装利用」(素材の視点・茶色のアイサイン)。舗装面の白い欠片が衛生陶器くず。
また「022遮熱舗装」(熱の視点・赤色のアイサイン)も。遮熱&透水性舗装を併用し路面温度の上昇を防止。
Chapter 3
ひかえめだけど探してほしい。
スタイリッシュな最新型節水小便器のそばにもごく控えめにアイサインが。
ところがいざ完成すると、あ、これはベタベタ貼れないなと。建物の迫力と美しさに思わず感動してしまって(笑)。それまでは、あちこちに付けて子供用「探してみようエコツアー」を開催しようとか、いろいろと考えていたのに。だからアイサインは非常に控えめな感じになりました。控えめすぎて数も少なく、サインにはアイテム名しか記載できず、まるでクイズのようですが、必ずそばに実現したものがあるので探してくださいね。1つ1つの取り組みはささやかでも、これだけの環境への試みがこの建物には詰まっている。それをもっと知ってもらいたい。CASBEE(キャスビー・建築環境総合性能評価システム)のSランクを取得して公のお墨付きこそもらいましたが、お客さまに伝える方法はこれからも考え続けたいですね。
〈山内さんのおすすめ環境アイテム〉
■節水器具(トイレ他)
「環境アイテム001~008」(水の視点・水色のアイサイン)
洗浄水量を従来より大幅に節水できるTOTOの最新型パブリック向け便器や節水型自動水栓(発電タイプ)、トイレ擬音装置などを建物全体の水まわりに採用。
■ソーラーチムニー(建物の南面)
「環境アイテム020」(熱の視点・赤色のアイサイン)
太陽熱により暖まった空気を地下の蓄熱槽に蓄えることで、冬はドーム状の大空間用暖房に利用。夏は除湿のための乾燥剤の再生に利用。また外気が気持ちの良い春や秋は、ガラスの塔内部の上昇気流を利用して自然換気を行う。
■陶片蓄熱槽(地下・見学不可)
「環境アイテム043」(素材の視点・茶色のアイサイン)
衛生陶器工場で出た廃材の陶片リサイクルとしては初めての試み。陶片が本当に蓄熱体として利用できるか検証実験を繰り返した。蓄熱槽内の積み方や方法も試行錯誤して検討。ソーラーチムニーと連動したシステムになっている。
■衛生陶器屑の舗装利用(駐車場)
「環境アイテム048」(素材の視点・茶色のアイサイン)
衛生陶器製造時に発生した陶器屑を駐車場の舗装材としてリサイクル。
■製造廃棄物の再利用(中庭)
「環境アイテム044」(素材の視点・茶色のアイサイン)
衛生陶器の原材料を細かく砕くために使い、磨耗したアルミナ石を玉砂利としてリサイクル。
■環境アイテム100解説用タッチパネル(入口ロビー)
環境アイテム100を知るにはまずここで。水(水色)・熱(赤)・電力(黄)・素材(茶)・緑(緑)・長もち(紫)・空気(藍)の7つの視点に分けられた環境への配慮がわかる。TOTOの節水技術による毎月の節水量や太陽光発電量も開示。
1. 節水技術で水資源保全に貢献したいというTOTOの思いが込められたトイレ・洗面台。/2. 環境配慮のシンボル・ソーラーチムニー。ガラスの塔は見た目も非常にスタイリッシュ。/3. 真っ白な球体を生かしたアルミナ石の玉砂利。アルミナ石のリサイクルは業界初の試みだ。/4.このタッチパネルで「環境アイテム100」を予習するとアイサインを探すのが楽しくなるはず。
編集後記
ミュージアムの便座変遷展示。単なる便座→暖房便座→ウォシュレット付き便座へ。“もっと快適でエコなトイレを”というTOTOの想いが日本のトイレ環境を世界最高水準に進化させたことがよくわかる。
商品企画時代はエコ商品作りの第一人者。エコシングル(Vol.2参照)開発も、山内さんの提案がきっかけだったとか。そんなアイデアマンも、ご自身のお子さんには「ふーんとか言われちゃうかな」と妙に弱気。でもご心配なく。TOTOのミュージアム展示は、年代を問わずどなたでも本当に楽しめます。歴代のトイレ変遷を見ると節水化のスピードに驚くし「ホテルニューオータニ」から昨年発見された日本初 ※1 のユニットバスルームや、歴史的有名建築の水まわり再現など、興味深い展示ばかり。家族みんなで楽しめる「TOTOミュージアム」、北九州の世界文化遺産巡りと合わせてぜひ訪れてみてください。
※1:JIS規格に適合したユニットバスルームとして
「環境アイテム100」の手法概要と効果はHPをご覧ください。
TOTOミュージアム
https://jp.toto.com/museum/