多様な他者とともに生きる未来へ

大阪・関西万博 休憩所4

2025.8.8

自分たちと異なるものへの想像力をもう一度思い起こさせること。それはいま享受している「当たり前」に気づくことなのかもしれない。自分自身を非日常的な状態にすることで、「当たり前」を見直し、他者へのまなざしも変化させる。天地に広がる、幾何学ではない、ゆるやかなカーブに包まれて「命」を見つめ直す。

※大阪・関西万博(EXPO 2025)において、会場内の休憩所・ギャラリー・トイレなど計20施設を、公募型プロポーザルにて若手建築家が設計。
本記事では、トイレだけでなく建築全体の紹介や、設計に携わった建築家の未来の建築に対する思いをご紹介します。

うねる床とうねるパーゴラ

ちょっと変わった広場をもつ休憩所。「さまざまな宗教、文化の人々が、祈り、祈祷、黙祷、瞑想、思索、物思いなどに、自由に利用」(万博公式サイト)するための「祈祷室」を会場内で唯一備えているのも特徴。トイレ棟の横には掘削と盛り土でうねるような丘をつくり、トイレ棟も含めてそこに鉄筋を組んだ大きなパーゴラを架ける。その広場にいくつかのベンチを置き、歩いていく過程で多くの気づきを得られる仕掛け。

       

配置と動線で安心と安全を守る

広場の脇のトイレ棟は建物としては一つだが、長手方向を活用することで男性、オールジェンダー+バリアフリー、女性それぞれのゾーンを分ける。まず手前に男性トイレを配置。その脇の長手方向にオールジェンダートイレ、バリアフリートイレ、授乳室、カームダウン室が並び、さらに回り込むように奥に進むと女性トイレとなる。この動線をつくることで女性トイレは奥まった印象が強くなり、安心感を生んでいる。

気づきを与える天地の相似形

バーゴラの鉄筋は敷地の地形に沿って組まれているので、足下のうねりとまったく同じうねりが上空にも再現されている。うねる傾斜を昇り降りすれば、平らなところとは異なる体の部位が刺激されて改めて人の身体の可能性を感じ、見上げれば地面の起伏の相似形が広がる。同じように見えてもそれぞれ違う身体をもち、違うように見えても同じ人間。「断絶を弱め、ともに生きる感覚をいま一度思い起こす」という気づきが、未来に向けてのレガシーとなる。
ライター:市川幹朗
※映像・画像は開催前に特別な許可を得て撮影をしています。工事期間中の撮影につき、一部完成建物と異なる箇所がありますが、予めご了承ください。

・パブリックトイレレポート
本現場のインタビュー記事が掲載されています。詳しくはこちら→
・事例サイト
建築概要・図面・器具 情報を掲載しています。 詳しくはこちら→

施主 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
設計 服部 大祐+新森 雄大/一級建築士事務所  Schenk Hattori+Niimori Jamison

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