うねる半透明のパネルで蜃気楼のように

大阪・関西万博 トイレ7

2025.8.1

周囲にシンボリックなパビリオンが立ち並ぶなか、それらの背景となる、あるいは周囲に溶け込むような建築のあり方を求めて検討されたトイレ。3Dプリンターでうねるような半透明の樹脂パネルを作成し、トイレ外周部を覆う。不規則に光を反射させる樹脂パネルはその存在を曖昧にすると同時に、トイレ内部に明るい光を届ける。

※大阪・関西万博(EXPO 2025)において、会場内の休憩所・ギャラリー・トイレなど計20施設を、公募型プロポーザルにて若手建築家が設計。
本記事では、トイレだけでなく建築全体の紹介や、設計に携わった建築家の未来の建築に対する思いをご紹介します。

周囲に溶け込むような造形を最新技術でつくる

ほぼ円形の敷地の中央に中庭を取り、外側と内側(中庭側)の外壁部分を湾曲した半透明のパネルで覆う。このパネルは3Dプリンターで出力された樹脂パネルで、カーテンのひだのようなうねる造形は周辺の風景や光を不規則に反射させ、蜃気楼のように周囲に建物を溶け込ませる。未来社会への実験として3Dプリントを使うことが思考されたが、その検討のなかで熱収縮によるゆがみなど3Dプリントの弱点を把握しつつ、施工上必要な部分の精度だけを追求することで、逆に自由な形態が生み出されている。

       

表情豊かな光が満ちるトイレ空間

女性トイレと男性トイレは、入り口と出口が別の一方通行の動線。女性トイレでは個室ブースが、男性トイレでは個室と小便器コーナーが中庭を中心に外周側に向かって並ぶ。個室ブースはブース上部が、小便器コーナーは上部が抜けているので、ハイサイドライト的にすりガラスのような半透明のパネルを透過した外周側の光が入り込む。手洗いコーナーの置かれた中庭側からも光が射し込むので、入り口からなかに進んでいくと、予想以上に明るいトイレ空間が広がるようになっている。

3Dプリンターが建築をどのように変えるか

すでに社会のさまざまなところで実用化されている3Dプリント技術は、いずれ建築でも利用が増えていくのは間違いない。このトイレでは、その技術を応用して外装材をつくっているが、幾何学に頼らない造形は同じ形が一つもない独特の建物形態をつくり、場所ごとに透過具合が異なることで多彩な光のバリエーションを得ている。新しい技術が未来をどのように変えていくのか、その可能性の一端を示すユニークな試みである。
ライター:市川幹朗

・パブリックトイレレポート
本現場のインタビュー記事が掲載されています。詳しくはこちら→
・事例サイト
建築概要・図面・器具 情報を掲載しています。 詳しくはこちら→

施主 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
設計 鈴木 淳平+村部 塁+溝端 友輔 PONDEDGE+farm+株式会社 NOD

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