空気膜構造が人と自然と未来をつなぐ

大阪・関西万博 トイレ3

2025.7.24

かつての万博で提唱されたアイデアを継承し、さらに未来へとつなぐ実験を兼ねつつ、風にそよいでエネルギー消費を削減するなど構造の課題の解決を図る試み。テント生地という柔らかな素材を活用して、人と自然を結ぶ試みにもなっている。

※大阪・関西万博(EXPO 2025)において、会場内の休憩所・ギャラリー・トイレなど計20施設を、公募型プロポーザルにて若手建築家が設計。
本記事では、トイレだけでなく建築全体の紹介や、設計に携わった建築家の未来の建築に対する思いをご紹介します。

自然を感じながらすごせる居場所

建物中央部の屋根に空気膜構造を採用しているのがこのトイレの大きな特徴。空気膜屋根の下は、トイレ建物内部の待合場所となっていて、人々はトイレの順番を待つあいだ、天井のテント膜が風にそよぐ様子や屋根上に溜められた水が陽射しにゆらぐさまを感じる。そうした自然の風や太陽の光、暑さなどを可視化することで、人がやすらぎながら過ごせる居場所をつくりだしている。

一息つける落ち着いたブースに

3か所ある出入り口のうち、今回の万博のシンボルである大屋根リング側に面した入り口は通路状になっており、左側にオールジェンダートイレ、バリアフリートイレが並ぶ。その奥にある広々とした膜屋根の下の空間は、トイレの順番を待つ場であり、男女のトイレスペースに分かれる通路にもなる。混雑する会場のなかで、ほっと一息つける場所になるよう建物内はブルーブラックの落ち着いた色彩で統一されている。

次代につながるエビデンスを求めて

70年大阪万博でいくつも提唱された空気膜構造だが、空気を送り続けなければならないというエネルギー消費と夏の暑さ対策が難しいという問題はなかなか解決できずにいた。ここでは、風の弱いときには風に揺られるに任せ、強いときには強く膜が張られた状態にして強風に耐えるという段階的な対応でエネルギー削減を図る。また膜の上に水を張って建物内部の温度を下げ、その水を建物外側に流して建物を水で冷やしつつ排水する。段階的な送風や屋根上の水による温度変化などは、今後の膜構造建築を考える際の参考資料となるべくデータの収集が会期中も続けられる。
ライター:市川幹朗

・パブリックトイレレポート
本現場のインタビュー記事が掲載されています。詳しくはこちら→
・事例サイト
建築概要・図面・器具 情報を掲載しています。 詳しくはこちら→

施主 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
設計 小俣 裕亮/ new building office

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