歴史的な「巨石」から未来を考える
大阪・関西万博 トイレ2
2025.7.17


「石」はかつて建築を構成する重要な建材だった。トイレ2では、約400年前に大坂城再建のために切り出されながらも使用されなかった「残念石」を活用する。地球の長い営みのなかで生まれ、歴史的価値もある巨石を見直すことで、いかに環境を次代に引き継いでいけるのかを人々に問い直す。
※大阪・関西万博(EXPO 2025)において、会場内の休憩所・ギャラリー・トイレなど計20施設を、公募型プロポーザルにて若手建築家が設計。
本記事では、トイレだけでなく建築全体の紹介や、設計に携わった建築家の未来の建築に対する思いをご紹介します。
文化財的価値のある巨石を利用する
およそ400年前に大坂城再建のために切り出されながら、実際には使用されることがなく放置され「残念石」と呼ばれていた石を使ったのが最大の特徴。文化財的価値のある巨石をできるかぎり損なうことなく、3Dスキャンで石の形状を計測し、その形状に合わせて壁や接合部材をつくり空間を構成する。万博を彩る周囲の建築という人工物のなかに置かれた、何億年という時間を有する巨石は、その存在を際立たせている。
石と屋根に覆われた特徴ある空間
トイレブースのある建屋は2つに大別され、片方には二つのバリアフリートイレ、もう片方に女性専用トイレブース4つ、オールジェンダートイレブース4つ、小便器コーナーが配されている。二つの建屋の間を守るように大きな屋根が架かり、女性専用トイレ前の手洗い場は石の柱と屋根に覆われた洞窟のような空間となっている。また、オールジェンダートイレと小便器コーナーの前の手洗い場を建屋から少し距離を取って置くことで、周辺とは異なる小さな広場のようなスペースをつくり、誰もが入りやすい動線としている。
悠久の時間を感じることで未来に思いを馳せる
重機などなかった時代、石を切り出して運ぶ作業には多くの人の力が必要だった。それと同じように多くの人たちの手でつくられ、また世界中から人々が集まる万博で、いろいろな人を巻き込んで空間をつくりたいという思いがこもる。このトイレは、未来を見せる万博という祝祭空間のなかで、何億年もの時間を生き抜いてきた石という素材を見直し、過去を、そして現在をどのように未来につなげていくかを考えるきっかけを投げかける。
ライター:市川幹朗
※映像・画像は開催前に特別な許可を得て撮影をしています。工事期間中の撮影につき、一部完成建物と異なる箇所がありますが、予めご了承ください。
・パブリックトイレレポート
本現場のインタビュー記事が掲載されています。詳しくはこちら→
・事例サイト
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施主 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
設計 Studio mikke 一級建築士事務所/Studio on_site Yurica Design and Architecture
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